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『国産だから安心』は本当か? セキュリティの視点で考える製品選択と運用力


コラム44

『国産だから安心』は本当か? セキュリティの視点で考える製品選択と運用力

2026/4/30

  • 評価分科会

株式会社ラック 岡本 勝仁

 「メイドインジャパン」と聞くと、どこか安心感を覚える人は多いのではないでしょうか。かつて日本製品は「高品質」の代名詞として世界的に評価されてきましたし、そのイメージは今でも根強く残っています。

 ただ、この「日本製=安心・高品質」という感覚は、クラウドサービスやセキュリティといった分野では、そのまま当てはめるのが難しくなってきているように感じます。

 最近では、国としても国産セキュリティの重要性が改めて議論されています。経済産業省は国内のセキュリティ産業の強化に向けた取り組みを進めており、技術の普及や産業基盤の整備を目的とした議論の場も設けられています。その背景には、日本国内で利用されるセキュリティ製品の多くが海外製である現状や、人材・投資・ビジネス構造といった課題があるとされています。こうした動きを踏まえると、国産製品を選ぶこと自体に一定の意義があるのも事実だと思います。

 実際、国産のサービスや製品には、日本語でのサポートの受けやすさや法制度との親和性、データの取り扱いに対する心理的な安心感といった強みがあります。一方で、海外のクラウドサービスやセキュリティサービスに目を向けると、機能の充実度やサービスの成熟度、これまでに蓄積されてきたインシデント対応の知見、さらには利用者コミュニティの規模といった点で優位な場面も少なくありません。

このように見ていくと、国産と海外のどちらが優れているかを単純に決めることは難しく、それぞれに異なる強みと前提条件があると言えます。

 ただし、ここで見落としてはいけないのが、クラウドサービスやセキュリティの安全性は製品やサービスそのものだけで決まるわけではないという点です。クラウドサービスには「責任共有モデル」という考え方があり、インフラの安全性は事業者が担保する一方で、アクセス制御や設定、ログの管理や監視といった部分は利用者側の責任となります。つまり、どれだけ優れたサービスを選んだとしても、使い方次第でリスクは大きく変わってしまいます。

 実際に発生しているインシデントを見ても、その多くはクラウドサービスの仕組み自体の問題ではなく、設定や運用の不備に起因しています。公開範囲の設定ミスによる情報漏えいや、必要以上の権限を付与してしまったことによる被害の拡大、さらには多要素認証の未設定によるアカウントの乗っ取りといった事例は、クラウドサービスの種類に関係なく繰り返し発生しています。これらは技術的に高度な攻撃というよりも、基本的な運用の積み重ねで防げるケースが多い点も特徴的です。

 また、セキュリティ対策では「防ぐこと」だけでなく「検知して対応すること」も同じくらい重要です。クラウド環境では、従来のシステムとは異なり、ログイン履歴やAPI操作といった新しい監視ポイントが増えています。こうしたログを適切に取得し、分析し、異常を早期に検知できる体制が整っていなければ、不正アクセスが発生しても長期間気づけない可能性があります。

 ここまでを踏まえると、「国産か海外か」という選択だけでセキュリティを語ることには限界があるように感じます。現状では、どのサービスを選んだとしても、その価値を十分に引き出せるかどうかは、利用者側の知識や経験、体制に強く依存しているのが実態ではないでしょうか。

 ただ、この状況は裏を返せば、今後改善の余地があるとも言えます。経済産業省の取り組みにも見られるように、国産セキュリティを単に普及させるだけでなく、より多くの現場で無理なく扱える形にしていくことが、今後の重要なテーマになると感じています。例えば、初期状態から安全性が確保された設定が適用されていたり、ベストプラクティスがあらかじめ組み込まれていたり、専門的な知識がなくても一定レベルの運用が可能になるような仕組みが整っていけば、利用者の負担は大きく下がります。

 さらに言えば、近年広がっている「ゼロトラスト」の考え方のように、特定の前提に依存せず、常に検証を行うセキュリティモデルをどれだけ実装できるかという点も重要になってきています。こうした取り組みもまた、どのクラウドサービスを選ぶか以上に、運用の設計や実装の質に左右される部分だと思います。 

 「国産だから安心」という考え方は一つの判断軸にはなりますが、それだけで安全性が保証されるわけではありません。最終的にその安心を現実のものにできるかどうかは、利用者の運用力と、それを支える仕組みにかかっているのではないでしょうか。

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