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【CSIJコラム40(2025,11,27)】
「生成AI、うまく使えば頼れる同僚、だけど無防備は禁物」

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株式会社ラック

杉 村 駿


 「AIって、忙しい日々の心強い助っ人だよね」—そう思う人、増えてきました。今では新入社員研修でもAIの使い方に触れる時代です。短時間で様々なアイデアを出し、文章も画像もサクッと作ってくれる。まるで仕事ができる同僚が1人増えたみたいですよね。

 しかし、便利だからといって、ルールなし・ノーチェックで使うと、あとで冷や汗…なんてこともあります。今日は、肩の力を抜きつつ、生成AIを安全かつ効果的に使うためのポイントを、3点紹介していきたいと思います。

1.プロンプトは「注文票」・・・具体的に・簡潔に
 AIへのお願い(プロンプト)は、レストランの注文票みたいなもの。「何を」「誰に」「どんな形で」届けたいのか、まずはここをハッキリさせましょう。

 目的:「社内向けに、5分で読める生成AIの安全な使い方を紹介」
 読み手:「非エンジニアの営業チーム」
 形式:「見出し+箇条書き、語尾はです・ます」

 このレベルまで具体化すると、AIは急に働き者になります。修正も減ります。さらにコツをもうひとつ。英語のプロンプトのほうが安定すること、けっこうあります。
 「まず英語で指示 → 出力を日本語に翻訳(または日本語で再生成)」という2ステップを試すと、仕上がりが落ち着くことが多いです。

 そして忘れてはいけないのが、入力データの手入れ。誤字や古い情報が混ざっていると、AIは律儀にその間違いも再現してしまいます。材料が良ければ料理も美味しい、またその逆もしかり、というわけです。

2.大事な話は慎重に・・・セキュリティとプライバシーの基本線
 一般にリリースされている生成AIサービスはご認識の通り「社外サービス」です。故に、機密情報をそのまま渡すのは、情報漏えいなどのリスクがあり、危険です。社内ポリシーと法令に合わせて、取り扱いルールを決めておきましょう。
 コツは以下の3点です。

 ・外部APIに送る前に、実名や金額は、ダミーに置換/削除してから投入
 ・ログの扱いを決める(保存期間・アクセス権・誰が見られるのか)
 ・アクセス権は必要最小限。なんでもかんでも「全員使える」は避ける

 要は、AIとの正しい「距離感」を設計すること、「親しき仲にも礼儀あり」、です。

3.最後の砦は人間・・・検証とフィードバックの習慣化
 AIは、学習データの外側にある情報を苦手とします。ときには、もっともらしい「それっぽい嘘」も平気で出力します。なので、重要な意思決定や公式文書では、必ず人間が確認しましょう。

 ・事実関係のチェック(出典・日付・数値)
 ・表現のトーン(社内外のルールに合っているか)
 ・誤解されない構成か(読み手の背景に合っているか)

 そして、レビュー結果を次のプロンプトに反映。小さな改善を重ね、それを繰り返していくことで、長期的に品質が安定してきます。AIは「育つ」道具。使い方が洗練されるほど、出力も良くなります。

『まとめ』
 生成AIは、きちんと運用すれば、効率化にも新しい価値創出にも効く強力なパートナーです。ただし、無防備に頼ると「情報漏洩」や「誤情報の拡散」といった、困った未来が待っています。まずはこの3点を意識することを推奨します。
 ・具体的なプロンプト設計とデータの品質管理
 ・セキュリティ・プライバシーと運用ルールの整備
 ・人間による検証とフィードバックの継続
 生成AIは、使い方次第で「頼れる同僚」にも「厄介なトラブルメーカー」にもなります。だからこそ、生成AIを気持ちよく利用できる環境を整え、有効的にビジネスに活かしていただければと思います。

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