【CSIJコラム9(2023,6,21)】
「入梅に考えるサイバーセキュリティ人材の育成」
サイバーセキュリティイニシアティブジャパン(CSIJ) 事務局長
持田 啓司
日本全国で梅雨に入り、傘が手放せない時期が来ました。筆者は「弁当を忘れても傘忘れるな」といわれる地域で生まれ育ったことから、梅雨に限らず傘を持ち歩く習慣がありますが、それにしても降ったりやんだりが続くこの時期は、少し憂鬱な気分にもなりがちです。
ところで、梅雨という言葉の由来は、梅の実が熟す頃の雨とも、ジメジメして黴(カビ)が生えやすいから「黴雨(ばいう)」と書くともいわれています。
梅雨という言葉の由来のとおり、毎年6月に入るころにはスーパーマーケットなどで青梅が売られ始めています。
この青梅は、生で食べるには硬くて渋くてさらには中毒を引き起こすので、そのままでは食べられず加工が必要です。例えば梅干しは、梅を塩漬けし、天日干しを何度か繰り返すことで出来上がります。梅酒は、梅を氷砂糖と焼酎に漬けて、定期的に静かにまわして液を均一にすることで出来上がります。
いずれも作り方は簡単に書きましたが、実際に出来上がるまでには非常に手間と時間がかかります。そして同じ青梅でも、梅干しと梅酒では加工方法が違えば、全く違う食べ物に仕上がるものです。
さて、筆者が事務局長を務めているCSIJでは、激しい環境変化や日本の市場特性を考慮したサイバーセキュリティへの対応を実装するための支援活動を行っており、その中の一つとしてサイバーセキュリティの対応・実装に必要な人材輩出に向けた活動を実施しています。
最初に青梅の加工方法について書きましたが、サイバーセキュリティ人材も、仕事の内容によって覚える知識や経験は違ってきます。また、青梅は食べられるまでに数か月から1年という時間が必要ですが、サイバーセキュリティ人材は仕事ができるようになるまでにはもっと多くの時間が必要です。
だからこそ、自組織のセキュリティ対応を行うためにはどのような人材が必要なのか、今現在だけでなく市場環境の変化によって将来どのような人材が必要となって来るのかを想定し、その人材像に近づくための学習や経験の階段を作って、必要とされる人材像に向かって成長してもらうことが重要です。
多くの業種業界で人材不足が叫ばれている中、環境変化が激しいセキュリティ分野の仕事には特に人材育成の計画性が重要となっています。CSIJでは人材分科会の中で、会員各社のメンバーで議論しながら、これから必要となるであろう職種の人材像をロール定義し、組織全体として将来を見据えた人材育成を行っていくことができるためのフレームワーク作成などの活動を行っています。自組織の人材育成にフレームワークを活用したり、他社の人材育成方法の情報交換をしたりする場として、CSIJへの入会をお待ちしています。
【執筆者プロフィール】
サイバーセキュリティイニシアティブジャパン(CSIJ) 事務局長
人材育成・組織開発を専門分野とし、CSIJの他にも多くの業界団体活動を行うほか、総務省、経済産業省、(独)情報処理推進機構などにおける人材育成に関する委員会の委員を務めている。